障がい者の就労実態とニーズの調査

  1. 調査レポート
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【実施の背景】

法定雇用率の上昇を受けて、障がい者の受け入れを検討する企業は増えているものの「どう接したらよいかわからない」「仕事を続けられるのか?」などの不安もよく耳にします。そこで障がい者のニーズを知るために、就労に関するアンケートを実施しました。

【調査対象者】

全国の「Co-Co Life☆女子部」サポーターおよび読者

【調査方法】

インターネット調査

【調査期間】

2023年6月17日~7月5日

有効回答者数:164名

【調査結果サマリー】

  • 現在働いている人は70.7%
  • 障がい者枠の正社員で就労している人は18.8%
  • 障がいをオープンにして働いている人は76.7%
  • リモートワークは働きやすいと考えている人は32%
  • 就職先を探す方法はさまざま

【就労の実態】

現在、働いていますか?

現在、働いていますか? の円グラフ
働いている 約70% 以前は働いていたが今は働いていない 14% 

現在または、直前の雇用形態を教えてください。

現在または、直前の雇用形態の円グラフ
正社員(一般枠)15%、正社員(障がい者枠)18.8%。パートアルバイト(一般枠)13.8% パートアルバイト(障がい者枠)29% 全体の7割以上が正社員とパート・アルバイト。

現在または直前の職種を教えてください。

現在または直前の職種の円グラフ
主な傾向は、事務職が44% 清掃・軽作業が12%、介護・福祉系が10% クリエイティブ系が9% その他、営業職、販売・接客、技能職、IT・エンジニア、医療系などがある。

現在または直近の勤続年数を教えてください。

現在または直近の勤続年数の円グラフ。
半年未満10%、1〜3年と3〜5年が共に21%、5年〜10年が21%、10年以上が18%。3年以上勤続している人が4分の3を超える。

就職先はどこで見つけましたか?

就職先はどこで見つけたかの円グラフ 主な就職先の説明は下記の記事の通り。
自由解答のため、他の選択肢は以下の通り多岐にわたる。
(一般)就職サイト
(一般)就職エージェント
(障がい者向け)就職サイト
(障がい者向け)就職エージェント
ハローワーク
就労移行支援
障がい者就労・生活支援センター
A型・B型事業所の紹介
知人・前職の紹介
インターネット
自分で絵を売っている。
新聞の折り込みチラシ
地域の情報誌
友だちが県の合同面接会にいくときついていった
進路の先生からのホテル紹介
自営業
Co-Co Life様からのご紹介
利用しているヘルパー事業所で、請求…
重度訪問介護を利用してる為、制度上…
高校時代の恩師の紹介
リタリコ仕事ナビ
張り紙
占い雑誌の求人案内
親の紹介
学生時代に行った職場体験
市役所での販売会
障害者就労支援センター
元々同じ系列の放デイに通っていて事…
起業した
アルバイト求人サイト
会社のHP
ネットで見つけた
復職しました
集団面接会
ジモティ
就職ではありません。
高校からの求人
受験

  • 1位 ハローワーク……21.4%
  • 2位 知人・前職の紹介……18.9%
  • 3位 一般就職サイト……6.9%
  • 4位 障がい者向け就職サイト……5.7%
    障がい者向け就職エージェント……5.7%
  • 5位 就職移行支援……5%

【障がい者の声】

✅就労の決め手やきっかけは何ですか?

  • 障がい者合同面接会があることを友達から聞いて行ってみました。(50代・聴覚障がい)
  • 透析をしながら無理なく働けそうだったから。(30代・ミトコンドリア病)
  • インターンシップで働きやすそうだと感じたから。(20代・脊髄性筋萎縮症)
  • 職場体験の実習があったため。(40代・精神障がい)
  • 就業時間が短く、体調不良の時なども休みやすい。(50代・双極性障がい)
  • 8時間労働がどうしてもできない。(50代・双極性障がいⅠ型)
  • ろう重複障がいを受け入れていただけるところがなく、知人の紹介で。(50代・聴覚障がい・右上肢・両下肢機能障がい)
  • 完全在宅で仕事ができること、障がいをオープンで働けること。(30代・統合失調症)
  • 家から近いのと、送迎付きだから。(20代・甲状腺機能低下症・解離性障がい・線維筋痛症・視覚障がい)
  • 障がい者だからと言って区別せず、成果を上げればちゃんと昇給や正社員化してもらえるから。(10代・脊髄腫瘍・脊髄空洞症)
  • 育児に理解があり、家庭との両立が可能と判断したから。(40代・上肢障がい)

【障がいの開示と就労の満足度の関係

職場で障がいをオープンにしていますか?

職場で障がいをオープンにしているかどうかの円グラフ。
選択肢は、オープン、一部オープン、クローズの三択。オープンが8割弱を占める。

障がいをオープンにしている人

障がいをクローズにしている人

満足 42.6% 14.3%
やや満足 32.2% 35.7%
不満 7.8% 28.6%

【就労に関する悩み】

就労での困りごとや不安は何ですか?

就労での困りごとや不安は何か?の棒グラフ。下記の15の選択肢とその他自由回答。解答数164件。
回答が多い順に、体調や体力面の不安77、障がい者の求人が少ない68、給料が安い67、人間関係57、障がいへの理解や配慮がない53、バリアフリーや環境調整50、通勤の問題48、昇給・キャリアアップを望めない35、会話・コミュニケーション33、リストラ・契約更新の不安27、休みが取りづらい26、ハラスメントがある20、仕事内容が合わない13、休みが取りづらい11、特にない11

障がいへの理解や配慮がない
障がい者の求人が少ない
リストラ・契約更新の不安
人間関係
会話・コミュニケーション…
ハラスメントがある
給料が安い
昇給・キャリアップを望め…
仕事内容が合わない
できる仕事がない
体調や体力面の不安
通勤の問題
バリアフリーや環境調整
休みが取りづらい

【読者の声】

✅わかってほしい!障がいのこと

  • どんなことができないのか、どんな仕事ならできるのか話し合える機会がもてたらいいと思います。(30代・先天性骨形成不全症)
  • 健常者より体調の変化があることを知って欲しいです。(10代・脊髄腫瘍・脊髄空洞症、他多数)
  • 社員全員で障がいに対する知識や理解を共有してほしい。(30代・全身性エリテマトーデス、他多数)
  • 一般企業もソーシャルスキルトレーニングが必要だと思います。(50代・発達障がい)
  • 法整備はもちろんですが、偏見をなくしてほしいです。障がい者に寄り添う気持ちが大切だと思います。(30代・混合性結合組織病・肺高血圧症・ADHD、他多数)
  • できることや何が得意かを見抜く目線。(30代・右半身まひ)
  • 目配りや声かけ。(50代・高次脳機能障がい)

✅働きやすい仕組みや環境を!

  • 幅広い働き方ができたらと思います。(50代・クローン病・脊髄の難病、他多数)
  • 就職にお試し期間があってもいいと思います。(20代・軟骨無形成症)
  • クールダウンができる休憩室があるといいです。(20代・肢体不自由・発達障がい・精神障がい・線維筋痛症、慢性疲労症候群)
  • 体調が悪い時のサポート。(40代・統合失調症)
  • 病気をオープンにすることがデメリットにならない風潮になってほしい。(20代・sle)
  • 社員寮や福祉ホームが整備されると助かります。(40代・脳性まひによる四肢体幹まひ・アテトーゼ型)
  • リモートワークでも働ける求人が増えてほしいです。(30代・痙性対まひ・自閉症スペクトラム)
  • 車いすトイレや働きやすいスペース。(40代・骨形成不全)
  • 障がいの有無に関わらずみんなが働きやすい環境があれば、結果として障がい者の就労につながると思います。(20代・二分脊椎症、他多数)
  • 障がいの状況や特性に合わせて、仕事の切り出し方を職場で共有すること。(40代・下肢まひ)
  • 幅広い年代で門戸を広げて、障がいや家庭と仕事を両立できる社会になってほしいと思います。(40代・上肢障がい)

✅困ったときの相談先がほしい

  • 社内に気軽に相談できる場があると良いと思います。(20代・二分脊椎症、他多数)
  • 会社側も採用してはい終わりではなく、仕事で能力を発揮できるよう、お互いに話し合える場がほしいです。(40代・身体障がい・片まひ)
  • 設備も大切だと思いますが、精神面のサポートやコミュニケーションの取りやすさが何よりです。(30代・脊髄損傷による両下肢まひ、他多数)

✅障がいだけでなく「人」を見て!

  • 『この人を雇いたい』と思って貰えるよう、勉強や面接練習を頑張ってホントに良かった!障がいがあっても、障がい者にもできることがあると世間に広めていきたいと感じています。(20代・脊髄損傷)
  • 障がい者もキャリアアップできたら…と思います。(40代・視神経脊髄炎)
  • 障がいがあるからといって、できないことばかりじゃないんです。(20代・顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー)
  • 障がいの理解が進んで、『障がい者枠』がなくても働けるようになってほしい。(30代・左大腿義足)
  • 『障がい』だけにフォーカスするのではなく、その人が持っている”強み”を見てほしいです。 できないと決めつけるのではなく、一緒にできることを探せたらよいですね。当事者もそれに甘えず、出来ることをみつけて周囲の理解を得られるよう伝えることも大切だと思います。(20代・脊髄小脳変性症)

【リモートワークに関する調査】

リモートワークの経験はありますか?

リモートワークの経験の有無の円グラフ ある47%、ない53%。

リモートワークと実際に出勤するのと、どちらが働きやすいですか?

リモートワークと実際に出勤するのと、どちらが働きやすいかの円グラフ。
リモートワーク32%、出勤16%、どちらとも言えない30%、わからない22%。

【障がい者の声】

✅リモートワークを希望する人の理由

  • 通勤のために満員電車に乗るのが大変だから。(30代・脳性まひ、他多数)
  • 具合が悪くなってもすぐに休めるから。(20代・脊髄損傷・人工肛門、他多数)
  • 人と接するのが苦手なので、リモートワークの方が自分に合うと感じています。(30代・自閉症スペクトラム)
  • 出勤で体力を使い切ってしまうから。(20代・全身性ジストニア)
  • トイレに気兼ねなくいける。(30代・二分脊椎)
  • 長時間の拘束に耐えられないから。(50代・双極性障がい1型)

✅リモートワークを希望しない人の理由

  • 対面のほうが仕事でわからないことや困ったことなどを質問・相談しやすい。(40代・双極性感情障がい、他多数)
  • リモートワークのパソコン操作についていけるか不安があります。(50代・発達障がい・精神障がい)
  • 出勤した方が自分も社会の一員であると思える。(30代・ミトコンドリア病)
  • 自宅は安らげる空間にしておきたいから。(30代・先天性骨形成不全症)

【法改正に対する意見】

「週20時間未満の仕事であれば働ける」という障がい者の働く機会を増やすため、2024年4月1日から「週10時間以上〜20時間未満の勤務も、障がいに応じて雇用率にカウントできる」と障害者雇用のルールが変わります

障害者雇用の法改正を知っていますか?

障害者雇用の法改正を知っているかの円グラフ。
知っている25%、知らない75%。

✅法改正 ◯ 賛成派の意見

  • ハードルが低くなり、働きやすくなりそう。(20代・脳性まひ、他多数)
  • 短時間労働が認められるなら、社会に出て自信を持てる障がい者も増えると思います。(30代・ミトコンドリア病、他多数)
  • 子供がいるため8時間勤務は難しく、どんどんルールが変わってほしい。(40代・ペルテス病に伴う変形性股関節症、うつ病)

✅法改正 ✕ 反対派の意見

  • 採用後、仕事をさせてもらえるかが不安。(50代・体幹障がい)
  • その時間数の勤務では経済的な自立は難しいと思います。(30代・脳性まひ)
  • 障がい者の雇用に力を入れるとは口先ばかりで、障がい者の労働時間の短縮と収入減につながりかねない。(20代・脊髄小脳変性症)
  • 雇用だけして、入社したらまともに仕事すら与えない状況が目に浮かぶ。(40代・二分脊椎症)

【障がい者の声】

✅理解やサポートに感謝している

  • 急な体調不良の時、リモートワークに変更させてもらえて助かりました。(20代・脊髄性筋萎縮症、他多数)
  • 筆談に対応していただけるので安心して働けます。(30代・感音性難聴・ろう者)
  • 気分が悪くなったら、横になれる部屋があります。(40代・睡眠障がい)
  • どうすればできるか、ミスが減るかを一緒に考えてもらえたました。(30代・発達障がい)
  • 階段に手すりをつけてくれたり、タイムレコーダーの位置を低く調整してくれるなど、相談に応じて柔軟に対応していただいています。(30代・先天性多発性関節拘縮症)
  • 排泄障がいで、トイレに時間がかかることを理解してくれるところ(30代・二分脊椎)
  • 仕事中の介助や環境整備など、就職前にたくさん話し合いをしていたため、大きく困ることなく働けています。(20代・脊髄性筋萎縮症)
  • 支援学校、ハローワーク、就労支援センターが連携して就職後までサポートしてもらえること。(20代・二分脊椎症)

【Co-Co Life調査員 松本純の分析】

前回のアンケートでは、ハローワークの独壇場だった障がい者の仕事探しも、ここ数年で多様化しつつあります。雇用率と働く障がい者の上昇に合わせて、さまざまな就労サービスが増えた点がその理由でしょう。

職場での障がい開示については、オープンにしている人が多数派です。具体的な配慮事項は違っても、「自分の特性を知ってほしい」のは、障がい区分を超えた多くの当事者の願い。障がいを開示した就労の方が理解を得やすいためか、隠して働く人より満足度は高めでした。

「採用したら終わり」ではなく、就職後の相談支援など、息の長いサポートを望む声も多く寄せられました。相談先の設置は、障がい者だけでなく多くの人が働きやすい環境を整えるために必要です。誰もが相談しやすい職場環境は、ハラスメントなどのトラブルや不祥事のリスクも低いと言われています。

厚労省の調査(参考:平成30年障害者雇用実態調査)でも指摘されていますが、障がい者の受け入れでネックになるのが「任せられる業務があるのか」という問題。ただ、「仕事はできない」と思われていた人も、就労支援などの専門家を交えて話し合いを重ねたところ、任せられる業務が見つかるケースはよくあります。また、同じ障がいの人同士でも仕事の適性は個人差があるため、障がい名だけで判断せず、専門家のアドバイスや対話を重ねる姿勢が大切です。

労力はかかるものの、障がい者への仕事の切り出しが業務改善につながった事例もあるようです。反対に、雇用率達成のみが目的化した状況は、現場に負担を強いるだけでなく、障がい者にとっても不本意な就労になりかねません。

アンケートでは、体調や特性に合わせた柔軟な働き方を望む声も多く寄せられました。同様のニーズは、子育てや介護などの事情を抱えた人にも当てはまるのではないでしょうか。少子高齢化が進めば、さまざまな事情を抱えた人が共に働く状況になるはずです。障がい者の受け入れを単なるコストと捉えず、職場環境の改善や時代の変化に対応する知見として役立ててほしいと思います。

感謝の言葉や評価に仕事のやりがいを感じ、働いて生活を豊かにしたい気持ちは、障がい者も同じ人間として持ち合わせています。仕事を通じてうれしかったことをたずねたところ、配慮やサポートとともに、障がいにとらわれず仕事ぶりを評価された体験をあげる人が多く見られました。

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